【編集長の視点】「300議席・2万円台乗せ」ならリキャップCB発行株は短打狙いが延長線上で長打にも=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

「300議席・2万円台乗せ」の大手証券の強気観測が、何だか大当たりしそうなムードである。同観測が公表されたときは、日経平均株価が、7-9月期の実質GDP(国内総生産)の2四半期連続のマイナスとなったショックで1万7000円台割れと急落し、デフレ・マインドが払しょくできないなかで、総選挙での「アベノミクスの信任」はおぼつかないと懸念された。

ところが、その安値から日経平均株価は950円高と急騰し、為替相場も1ドル=121円台と7年4カ月ぶりの円安となった。報道各紙の公示直前の世論調査による序盤情勢分析でも、自民党が300議席をうかがい、公明党と合わせた与党合計では3分の2の議席数獲得も視野に入ってくる大見出しが躍った。直近の最大のリスク要因と懸念された選挙結果が、逆にマーケットのフォローの材料となるなら、大手証券の観測通りに今年12月末に日経平均株価2万90円示現の道筋もみえようというものである。

しかも、ここにきて日経平均株価の急騰は、トヨタ自動車<7203>(東1)が、12月入りとともにわずか5日で約500円高、売買高も急増してリードしているのである。業績、材料、需給のどこからみてもケチのつけようがなく、同社株が、このまま2007年2月につけた上場来高値8350円をクリアするようなら、なお全員参加型相場を加速させる可能性が強い。12月は、新規株式公開(IPO)株が、月間28社二も達するラッシュとなり、IPO株は、「値動きが軽い」ことをセールス・ポイントとしているが、衆議院選挙の投開票日の14日を挟んで、トヨタに代表される主力株とIPO株とでは、どちらが「値動きが軽い」か競い合う展開も想定される。

こうなると師走相場の残り17営業日は、恒例の「掉尾の一振」どころか「掉尾の大ホームラン」を狙いたくなるのが投資家心理というものである。それでなくても、今年10月の安値場面では、米国景気の先行き不透明化やエボラ出血熱の感染拡大懸念で持ち株を処分、この11月以来の株価急上昇に乗り切れなかった投資家は、ことのほか肩に力が入ることと推察する。

年末に日経平均株価が2万円台に乗せるとすれば、肩に力が入ろうと、目をつぶってバットを大振りしようが、バットにボール(投資銘柄)が当たりさえすれば、オーバーフェンスするホームランは期待できるというものである。ただ10月相場で折角、安全第一を選択し、その結果、今回の急騰相場にやや乗り遅れ気味の投資家には、一か八かの強振より内野手の間を抜く短打狙いをお薦めしたい。この期に及んで何を弱気とお叱りを蒙りそうだが、なんのなんの「300議席・2万円台乗せ」が実現するなら、ヒットの延長線上で長打、ホームランというケースもないでもないはずだ。この短打戦法のターゲット・セクターとして注目したいのが、リキャップCBの発行会社である。

リキャップCBとは、新株予約権付社債(転換社債=CB)発行により調達した資金で自社株式取得を行う財務手法で、CB発行で負債が増える一方、自己株式取得で資本が減るため、自己資本利益率(ROE)を改善させる効果がある。「アベノミクス」の成長戦略にも、このROEの向上が打ち出され、運用方針を見直したGPIF(年金積立管理運用独立行政法人)の株式組み入れの投資基準にも導入された。東証は、ROEの高い銘柄400社を選定して算出した新株価指数「JPX日経インデックス400」を今年1月から公表、上場投資信託(ETF)が新規上場され、さらにこの11月25日から先物も上場された。

ROE向上を目指してリキャップCBを発行する企業も増加傾向にあり、この発行とともに株価が上昇する銘柄も多く、この銘柄を「掉尾の一振」銘柄として注目したいのである。実は、直近の12月4日にリキャップCBを発行した銘柄がある。ケーズホールディングス<8282>(東1)である。300億円の資金調達をして100億円、360万株(発行済み株式総数の6.84%)の自己株式取得を決議、そのうち188万4700株を立会外買付(取得価格2935円)した。株価は、前週末5日にこれをテコに105円高と急伸したものの、大引けでは25円安となって大陰線を引いた。しかし諦めるのは早いのである。リキャップCBを発行した会社は、その発行が一回にとどまらず再度、発行するケースもあるからだ。過去の発行銘柄へのアプロ―チ余地を示唆することになる。

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