【どう見るこの相場】「森を見ずに木を見て枝ぶりまで見極める」なら超出遅れ顕著な電炉関連株が有力候補

どう見るこの相場

 10月中旬からスタートした決算発表では、業績の上方修正ラッシュとなっている。大手経済紙の途中集計では3社に1社が上方修正と報道されたが、さらに後続組が相次いでいる。業績上方修正分の大半は、原材料価格の上昇を価格転嫁する値上げ効果と円安進行により発生した為替差益で占められており、価格転嫁力の強弱が問われたことにある。その強さに着目した株価の業績感応度は、半端ないサプライズで過剰反応とさえいわれるストップ高まで買われる銘柄が続出した。

 この決算プレイの象徴は、トヨタ自動車<7203>(東証プライム)と日本製鉄<5401>(東証プライム)だろう。自動車鋼板の需要サイドのトヨタは、値上げの影響で今2023年3月期第2四半期の純利益が2年ぶりに減益転換し、供給サイドの日本製鉄は、逆に今3月期の純利益を上方修正したからだ。株価ポジションも、2000円大台を割ったトヨタと2200円台に乗せた日本製鉄とで逆転した。この原材料価格の上昇と価格転嫁は、なお続編がある。輸入原料の価格上昇に拍車を掛けている円安・ドル高に歯止めに掛けられないままで、日米金利差縮小の呼び水となるはずの異次元金融緩和策の出口戦略は、多分、黒田東彦日銀総裁の来年4月の任期満了を待たなければならないとみられるからだ。

 ましてFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、前週開催のFOMC(公開市場委員会)で「利上げ停止の検討は時期尚早」と発言しハト派を装っていたタカ派であることが判明した。前週末4日の米国市場では、ダウ工業株30種平均(NYダウ)が、5日ぶりに反発したものの、長期金利は強含んでおり、ハイテク株売り、景気敏感株買いと高安マチマチで、この金融情勢次第では、クリスマスラリーがクリスマスセールに逆転する取り越し苦労もしなくてはならないかもしれない。とすればここは相場セオリー通りに「森を見ずに木を見る」個別株物色である。

 問題は、どの「木」が浮上するかで、今週の当特集では、日本製鉄と同様に業績を上方修正し価格転嫁力の強さを示唆した鉄鋼関連株と追随する鉄鋼専門商社株にフォーカスすることにした。ただしこの鉄鋼関連株は、注意が必要である。というのも同じ鉄鋼株でも日本冶金工業<5480>(東証プライム)のようにストップ高を演じた銘柄がある一方で、今期業績を再上方修正したものの第2四半期業績が、前回の上方修正値を下ぶれて売られた東京製鉄<5423>(東証プライム)や一転して前回の上方修正値を下方修正して株価が急落した共英製鋼<5440>(東証プライム)や大阪製鉄<5449>(東証スタンダード)のケースもあったからだ。

 「森を見ずに木を見る」相場セオリーは、さらに「木の枝ぶりも見極める」厳選は不可欠となる。そこで注目は、今年7月~8月に続いてこの10月以降に業績の再上方修正に踏み切った電炉株である。原材料の鉄スクラップ価格が、中国景気の動向次第ではさらに下ぶれるかもしれない潜在材料もある。鉄鋼専門商社株ともどもPERは1ケタ台、増配により配当利回りも大きく市場平均を上回り、それぞれ低PER・高配当利回りランキングの上位にランクされおり、超出遅れ修正は想定範囲内となる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■歯周病の進行抑制に向け、老廃物除去と免疫調整の2軸で研究  ライオン<4912>(東証プライム)…
  2. ■バリア性能と印刷適性を両立、2030年までに10億円売上目指す  大日本印刷<7912>(東証プ…
  3. ■胃がん・大腸がん対策で「Train the Trainerプログラム」を展開  オリンパス<77…
2025年9月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物相場を背景に産金株が収益拡大の余地を示す  東京市場では金価格の上昇を背景に産金株が年初来…
  2. ■大統領の交渉術が金融市場を左右し投資家心理に波及  米国のトランプ大統領は、ギリシャ神話に登場す…
  3. ■価格改定効果に加え9月以降の値上げで業績上乗せが期待される銘柄  今週の当コラムは、9月に価格改…
  4. ■9月1日に値上げラッシュの食品株は日銀バトルで小緩んでも株高持続性  まさに「パウエル・プット」…
  5. ■メガバンク株は業績修正や自己株取得が焦点、再編思惑も視野  銀行株やコメ関連株は盆休み明けの注目…
  6. ■日経平均史上最高値更新、夏枯れ懸念を払拭  前週末15日のマーケットは、お盆を象徴するかのように…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る