
■アルカリ水電解と食塩電解を併産、2GW超の新設備で収益基盤と成長投資を両立
旭化成<3407>(東証プライム)は10月23日、神奈川県川崎市の川崎製造所において、クリーン水素製造用アルカリ水電解システムおよび食塩電解プロセスの両事業に対応する新工場を建設することを発表した。新工場では電解用枠と電解用膜を併産し、それぞれ年間2GW超の生産能力を備える。2028年度の稼働を予定し、既存設備を含め年間3GW超の生産体制を構築する。総投資額は約310億円で、そのうち最大3分の1を経済産業省の「GX(グリーントランスフォーメーション)サプライチェーン構築支援事業」補助金により賄う。同計画は2024年12月に同事業へ採択されており、国内水電解装置製造サプライチェーンの整備を目的とする。
同社は1975年よりイオン交換膜法食塩電解事業を展開し、膜、電解槽、電極、モニタリングシステムなどの要素技術を自社内で完結できる体制を強みとしてきた。基礎化学品の安定供給を支え、国内外の産業発展に寄与してきたが、今後はこの技術基盤を活かし、クリーン水素市場の本格拡大を見据えた水電解事業への展開を加速する。2010年以降はアルカリ水電解システムの大型化・量産化技術を検証しており、2025年度から事業化フェーズに移行する。水素事業を「戦略的育成」分野と位置づける中期経営計画「Trailblaze Together」に沿い、川崎製造所を同領域の中核拠点として再構築する方針だ。
川崎製造所では、メタクリル酸メチル(MMA)事業撤退を経て経営資源の再配分を進めており、今回の新工場設立により、食塩電解と水電解を両輪とする体制へ転換する。これにより、収益基盤の維持と新成長分野への投資を両立し、柔軟かつ強靭な供給体制を確立する狙いだ。旭化成の竹田健二執行役員は「食塩電解で培った技術と水電解の知見を融合し、クリーン水素と基礎化学品の両市場に対応する」と述べ、GXサプライチェーンの中核として安定供給と技術革新を両立させる姿勢を示した。今回の新工場整備により、同社は国内外のクリーン水素供給基盤の強化と日本の水素産業競争力向上に寄与する見通しである。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)