【小倉正男の経済コラム】コロナ不況「最悪の想定」で生き残る企業経営

小倉正男の経済コラム

■いまは非常時というしかない

 7月~8月は、企業経営者たちの集まりが再開された。東京駅八重洲、銀座、日比谷などでミーティングがあり、座談会やインタビューの機会があった。

 緊急事態宣言を経て、7月~8月は新型コロナが下火になるだろうという想定で座談会、インタビューなどが設定されたわけである。しかし、折悪しく新型コロナが再燃し、経営者のなかには大事を取って急遽欠席する人も少なくなかった。都心部の人々の動きもまばらだった。

 「withコロナ」といっても、再燃しているなかでは人々の動きは抑えられる。ホテル、ビルなどの催し事会場も閑散としている。開催されても、一部出席者がリモート出演ということも一般化している。出席者が一同に会するのは困難になっている。

 よほどのことがないと都心部でミーティングを行うといっても、経営者などを簡単に集めることは無理となっている。私自身が前日まで開催されるのか心配していたぐらいだから、やはりいまは「非常時」というしかない。

■コロナ不況は長期化が避けられない

 企業経営者の多くが話しているのは、「今20年度はどうやっても赤字転落が避けられない、来21年度も大きく回復するとは思っていない」ということだ。「回復するにしても22年度あたりになるだろう」と厳しい見通しを語っている。

 自動車関連、これは裾野が広大な産業分野なのだが例外なく大変厳しい。ホテル関連、貸しビル関連、外食関連、設備投資がらみの建設関連、機械関連なども激しく痛んでいる。

 経営者がいまやっているのは今20年度一杯の資金手当だ。売り上げがなかなか見込めないのだから、融資など資金繰りのメドを取り付けて、社員たちの給料、雇用を何とか維持するということである。

 一時的に休業するとしても社員たちに給料は払わなければならない。企業のサバイバル(生き残り)と同時に社員たちの不安を取り除いておきたいという狙いを語っている。

■「最悪の想定」サバイバルを意識する経営

 企業経営者が語っているのは、当然ながら原価、販管費の見直しである。ムダのカット、かなり細かいムダのカットにも乗り出している。本支社、工場などあらゆる分野でコストの見直しが行われている。

 「先が見えない時は基本に戻れ」。ある経営者は、「こういう時は原点回帰で工場の生産ラインの見直しから開始している」、と。
 コストの見直しのみならず、なかには「売れるものから売れ」と、株式、不動産あるいは一部の傘下事業まで売り出している企業もある。いまはキャッシュを持っているのがいちばんという考え方によるとみられる。サバイバル(生き残り)を意識しての動きからである。

 少なくない企業経営者が、「最悪の想定」、あるいは「極悪の想定」で臨んでいる。おそらく新型コロナ不況から生き残って立ち直るのは、こうした企業のなかからとみられる。

 米中貿易戦争の激化、それに国内的には消費税増税が行われた。景気低迷の最中に新型コロナという酷い困難が襲っている。しかもいまは立ち直りの兆しはない。企業経営は真価が問われる時代に突入している。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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