【どう見るこの相場】金融システム不安が消えない新年度相場の安全運転はまず食品関連2業種から「左ジャブ投資」

 「花に嵐」ならぬ雨である。満開の桜が、冷たい雨に打たれた。濡れた足元から伝わってくる花寒に、4年ぶりの行動制限なしの花見も、若干トーンダウンを余儀なくされた。マーケットの方も、4月は新年度相場入りだというのに、金融システム不安が収まらず震源地の米国では引き続地方銀行への取り付け騒ぎも伝えられ、新年度相場入りを前に手ぐすねを引く新規買い出動の第一歩も気迷い勝ちである。

 この金融システム不安が、他人事とも思えない側面もあった。東京市場でも、米国のシリコンバレー・バンク(SVB)の経営破綻と間を置かず今3月期業績を下方修正した地方銀行株が、南都銀行<8367>(東証プライム)、ひろぎんホールディングス<7337>(東証プライム)、名古屋銀行<8522>(東証プライム)などと相次いだからだ。

 ただ幸いなことに3行は、いずれも期末接近とともに保有している外国債券を損失処理したことによる業績の下方修正で取り付け騒ぎのニュースも聞こえて来ず、債券投資失敗で預金流出に見舞われたSVBとは異なり、まだ余裕の会計処理とも評価され、株価下落率も、銀行株の平均並みにとどまった。名古屋銀行に至っては、同時発表の自己株式取得・消却を手掛かりに小反発した。仮に今後も銀行株に業績下方修正が続くとしても、「みんなで損失処理をすれば恐くない」となる展開を祈るばかりである。

 足元のマーケットも、この金融システム不安で動揺が続いているものの、リスクオンがすべてリスクオフに変わったわけではないようである。例えば、米国の長期金利低下に対応しては高PERのハイテク株が買われるセクター・ローテーションが健在だったほか、業績の上方修正銘柄や話題のChatGPTの生成AI(人工知能)を活用した新サービスを提供した銘柄、さらには新規株式公開(IPO)株などが逆行高した。全面安のなかでも、業績とカタリスト(材料)などを限定する局地戦ならば、投資パフォーマンスが期待できることを示していた。

 ボクシングでは「左は世界を制する」とのキャッチコピーが有名である。対戦する相手に対して左ジャブを繰り出して間合いを計り牽制しつつ、隙を見つけて必殺の右パンチを見舞うテクニックを表しており、世界チャンピオンへの道を拓いてくれる必勝法である。

 マーケットの方も、新年度相場に向け期末・期初に配当の再投資など定番の需給相場が展開されると想定されるなか、最初から「死んだふり」はさすがに問題で、相場との間合いを計るこの安全運転の「左ジャブ投資」を試してみる価値がありそうだ。金融システム不安は、来々月の5月2日、3日に開催予定のFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)まで方向が定まらないとの観測もあるだけになおさらだろう。

 そこで今週の当特集では、「左ジャブ投資」の局地戦候補株としてマーケットのセンターから外れては金融システム不安や配当の再投資の需給相場の影響を受け難く、さらに独自のカタリストやファンダメンタルズを内包する銘柄をスクリーニングした。浮上したのは、2つのディフェンシブ系の小型食品株である。その一つは、鶏卵価格の世界的な高騰による「エッグフレーション」で業績を上方修正した鶏卵関連株、もう一つは同じく粗糖価格が高騰したものの、値上げなどで対応して逆に業績を上方修正した砂糖株である。株価が、暖気運転から徐々にセカンド、サードとシフトアップし表舞台でスポットライトを浴びるようになるなら新規マネーを呼び込む展開も想定範囲内となる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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