NECは大規模言語モデル(LLM)と画像分析により被災状況を把握する技術を開発、現場画像を絞り込み地図上に表示

■時々刻々と集まる現場画像からどこで何が起きているかを整理し、被災状況に応じた迅速な対処を可能に

 NEC(日本電気)<6701>(東証プライム)は25日、大規模言語モデル(Large Language Model:LLM)と画像分析により被災状況を把握する技術を開発したと発表。

 同技術により、災害発生時に集まる膨大な被災現場の画像から、即時かつ的確に被災状況・場所を把握することが可能となる。NECは今後、災害対応を担う関係省庁や自治体などに同技術を提供し、災害発生時の避難誘導や救助活動など初動の迅速化に貢献していく。

■背景

 近年、豪雨災害の激甚化や巨大地震の発生など、世界の多くの地域で自然災害の頻度や深刻さが増している。こうした災害発生時には、被災者の避難誘導や救助活動などの初動を迅速に行えるよう、被災状況を素早く的確に把握することが極めて重要である。しかし、災害発生時に関係省庁が公開している降水量分布や震度分布、住民から寄せられる被害や安否についてのテキスト情報には、詳細な被災状況や場所の情報は十分に含まれておらず、迅速な初動の実現には未だ課題がある。一方、自治体などへ提供される被災現場の画像(スマートフォン、ドライブレコーダー、街頭カメラなど)には、詳細な被災状況や場所の情報が含まれているため、現場画像の活用が期待されている。

 今回NECは、初動の迅速化に向けて、膨大な現場画像から被災状況の把握に必要な画像を素早く的確に絞り込み、それらを番地レベルの正確さで地図上に表示する技術を開発した。

【同技術の特長】

■利用者の意図に応じて現場画像を絞り込み

 LLMによる言葉の意味解釈と画像分析による画像の類似性判定を活用することで、膨大な現場画像の中から利用者の意図に合う画像に絞り込むことができる。

 従来、画像の絞り込みには画像認識技術が広く用いられてきたが、あらかじめ学習した対象物しか認識できず、絞り込める画像が限られていた。そのため、災害の種類、規模や被災地域、事態の進行状況によって多様化する利用者の意図に応じて、的確に調査することが難しいという課題があった。

 同技術では、LLMを活用することで、フリーワードにより現場画像を絞り込むことができる。さらに、画像分析を活用し、利用者が探したい場面を画像で指定することにより、言葉では表現が難しい場面でも類似した画像に絞り込むことが可能である。これらを組み合わせることで、利用者の意図に合う画像に的確に絞り込めるため、様々に変化する被災状況に素早く対応することができる。

■被災状況・場所を地図上に番地レベルで表示

 被災場所が分からない現場画像について、街の広い範囲をカバーする上空画像や地図データと照合することで、現場画像の場所を番地レベルの正確さで推定し、地図上に表示することができる。

 災害時などの緊急時に提供される現場画像には、必ずしも位置情報が付与されておらず、被災場所の特定が難しい場合がある。これまでNECは、衛星画像や航空写真などの上空画像を活用して場所を推定する技術を開発してきたが(注1)、今回、地図データの地理情報を合わせて活用することで、世界最高水準の照合精度を達成(注2、3)し、災害時の現場画像でも高精度に場所を推定することが可能になった。

 同技術は、現場画像から道路、建物、信号機などの領域を自動抽出し、地図のレイアウト情報(道路や建物などの形状や配置)と照合することで場所を推定する。これにより、地震の際は建物よりも損壊リスクの低い道路の情報を積極的に用い、水害の際は道路よりも冠水リスクの低い建物の情報を用いて照合することで、建物の一部倒壊や道路の一部浸水がある現場画像でも高精度に撮影場所を推定することができる。

■今後の展開

 NECは、災害発生時の避難誘導や救助活動をはじめとする初動の迅速化を支援すべく、同技術の2025年度中の実用化を目指していく。また、LLMや画像分析技術の活用シーンを広げていくことで、社会の安全・安心、利便性の向上に貢献していくとしている。

(注1)2022年2月10日 NEC、景観画像の場所を衛星画像や航空写真から推定する技術を開発
(注2)公開データセットCVUSAを用いた上空撮影画像8,884枚の検索タスクによる検索上位1%の正解率(地上撮影画像の画角が90°の場合)
(注3)「SemGeo: Semantic Keywords for Cross-View Image Geo-Localization」。
(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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