マーケットエンタープライズ、ネット型リユース事業の好調が牽引し大幅増益予想、26年6月期も収益拡大基調

 マーケットエンタープライズ<3135>(東証プライム)は、持続可能な社会を実現する最適化商社を目指して、ネット型リユース事業、メディア事業、モバイル通信事業を展開している。中期経営計画では、個人向けリユース分野における投資を拡大し、リユース市場でのプレゼンス確立を推進する方針としている。25年6月期は経常・最終利益を上方修正して大幅増益予想としている。ネット型リユース事業の好調が牽引する見込みだ。またSBI証券との差金決済型自社株価先渡取引契約の期限前解約に係わるデリバティブ解約益96百万円を営業外収益に計上(7月3日付リリース)する。積極的な事業展開で26年6月期も収益拡大基調だろう。株価は戻り高値圏から反落してやや軟調な形となったが、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。なお8月14日に25年6月期決算発表を予定している。

■持続可能な社会を実現する最適化商社

 持続可能な社会を実現する最適化商社を目指し、ITとリアルを融合させたリユース事業を中心に事業領域拡大戦略を推進している。セグメント区分はインターネットに特化してリユース品を買取・販売するネット型リユース事業、消費者に対して有益な情報をインターネットメディアで提供するメディア事業、低価格通信サービスのモバイル通信事業としている。

 24年6月期セグメント別(調整前)売上構成比はネット型リユース事業58%、メディア事業3%、モバイル通信事業39%、営業利益構成比はネット型リユース事業41%、メディア事業25%、モバイル通信事業34%だった。

 なお大株主だったYJ1号投資事業組合から信託期間満了により保有株式売却の意向が寄せられたことに伴い、市場売却による株価形成への影響を避けるため、22年9月14日付でSBI証券と差金決済型自社株価先渡取引に係る契約を締結し、22年9月15日付の立会外終値取引(ToSTNeT―2)によって、YJ1号投資事業組合が保有していた同社株式40万株をSBI証券が取得した。会計上の取り扱いは各四半期末時点で時価評価を実施し、前四半期末との差額を営業外収益または費用に計上する。その後、25年2月14日付でSBI証券に対して、25年2月21日を期限前解約基準日とする一部期限前解約を通知した。また25年5月14日付で、25年5月21日を期限前解約基準日として、その全部の期限前解約を通知した。これにより本取引による損益が確定することになる。25年7月3日には、25年5月14日付で公表した期限前解約に係わる対象株式(20万株)の売却が完了し、営業外収益で計上するデリバティブ解約益の額が確定したとリリースしている。

■「高く売れるドットコム」と「おいくら」

 ネット型リユース事業は販売店舗を保有せずに、インターネットに特化して買取・販売サービスを展開している。買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、商材別に分類された30カテゴリーに及ぶ幅広い対応で自社WEB買取サイトを運営し、コンタクトセンターにおける事前査定、リユースセンターにおける買取・在庫一括管理・商品化、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトでの販売という、一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。

 なお25年3月には、LINEヤフー主催の「Yahoo!オークション Best Store Awards2024」において、同社が運営する総合リユースECストア「ReReオークションストア」が、4つの部門で部門賞を受賞するとともに、総合賞第1位(19年以来5年ぶり4度目)に選出された。

 また「高く売れるドットコム」と日本最大級のリユースプラットフォーム「おいくら」(19年2月に事業譲受)のシステム連携・送客も強化している。24年6月には出張買取専門サービス「買いクル」などを展開するRCが「おいくら」と業務提携した。「おいくら」加盟店は24年12月末時点で1000店舗を突破した。

 リユースセンターについては23年9月に広島リユースセンター、大阪リユースセンター東住吉店(大阪府内としては吹田市に続く2拠点目)を開設し、全国16拠点となった。

 地域社会における課題解決を目的として地方自治体との取り組みを推進しており、リユースプラットフォーム「おいくら」を導入した自治体の不用品リユース事業は、25年1月に大阪府池田市、愛知県春日井市、岐阜県輪之内町、埼玉県さいたま市、埼玉県三芳町、宮城県利府町、静岡県沼津市、愛知県西尾市、滋賀県米原市、沖縄県名護市、茨城県阿見町、兵庫県小野市、25年2月に滋賀県彦根市、大分県国東市、島根県松江市、愛知県扶桑市、沖縄県読谷村、栃木県大田原市、東京都清瀬市、静岡県長泉町、岡山県総社市、福島県会津坂下町、愛知県阿久比町、埼玉県毛呂山町、大阪府熊取町、25年3月に長野県茅野市、埼玉県宮代町、沖縄県北谷町、新潟県柏崎市、愛知県犬山市、愛知県知多市、愛知県尾張旭市、佐賀県小城市、福島県天栄村、25年4月に秋田県鹿角市、北海道名寄市、25年5月に岐阜県各務原市、大阪府摂津市、岡山県笠岡市、25年6月に大阪府泉南市、静岡県富士市、東京都国分寺市、和歌山県和歌山市、東京都世田谷区、静岡県牧之原市、岐阜県垂井町、25年7月に埼玉県八潮市で導入され、導入自治体数は全国で264となった。

 また24年10月には静岡県に位置する磐田市、袋井市らと6者間連携のリユース事業協定を締結した。24年12月には成田国際空港と空港内で発生する不用品のリユースに関して業務提携した。25年2月には福島県に位置する二本松市、本宮市、大玉村、安達地方行政組合とリユース事業協定を締結した。

 25年3月には、東大松尾研発スタートアップのWanderlustとの事業提携およびAIを活用した営業アシスタントの共同開発を発表した。これにより「高く売れるドットコム」の買取成約率向上、および営業スキル向上によるサービス品質向上と売上拡大を目指す。

■中古農機具

 中古農機具、中古建機、中古医療機器など法人向け大型商材の取り扱いを拡大している。子会社MEトレーディングは20年5月に中古農機具事業を譲り受けて、中古農機具の買取代行、国内および海外販売・輸出代行を展開している。

 21年10月にマシナリー(中古農機具)ビジネス加速に向けて北関東リユースセンター(茨城県結城市)を開設、21年11月に北関東リユースセンターから中古農機具のEU向け輸出を開始し、中古農機具の取扱量拡大・EUへの輸出強化、拠点での対面販売による新規就農者支援などを推進している。

 23年3月には就農者支援と新規就農促進を目的として中古農機具を用いたリユース連携を開始した。第1弾として福島市と連携した。中古農機具市場の活性化を促進することで、農業の観点からも持続可能な社会形成を目指すとしている。24年6月にはバリュークリエーション<9238>と業務提携した。バリュークリエーションが運営する解体工事プラットフォーム「解体の窓口」を通じて中古農機の仕入を強化する。

■メディア事業とモバイル通信事業

 メディア事業は賢い消費を求める消費者に対して、その消費行動に資する有益な情報をインターネットメディアで提供するサービスを展開している。広告収入が収益柱となる。

 モバイル通信関連のメディア「iPhone格安SIM通信」「SIMチェンジ」、モノ売却・処分関連のメディア「高く売れるドットコムMAGAZINE」「おいくらマガジン」、モノ修理関連のメディア「最安修理ドットコム」、中古農機具買取・販売プラットフォーム「中古農機市場UMM」、農業に特化した「農業とつながる情報メディアUMM」などを運営している。25年2月には新サービスとして動画メディアサービスを本格的に展開すると発表した。

 モバイル通信事業は、子会社のMEモバイルがMVNO事業者として、通信費の削減に資する低価格かつシンプルで分かりやすい通信サービスを展開している。主力は「カシモ」ブランドのモバイルデータ通信サービスである。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を公表(21年12月24日付で提出、24年3月18日付で更新)した。中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。

 24年9月30日には24年年6月末時点での計画進捗状況を公表した。流通株式時価総額については基準を充たしていないため、引き続き、中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。

 なお中期経営計画については23年8月14日付で新3ヶ年中期経営計画(24年6月期~26年6月期)を公表し、目標値に26年6月期売上高300億円、営業利益20億円を掲げている。主に個人向けリユース分野における投資を拡大し、リユース市場でのプレゼンス確立を推進する方針としている。

■25年6月期大幅増益予想、26年6月期も収益拡大基調

 25年6月期の連結業績予想(5月14日付で売上高と営業利益を据え置き、経常利益を50百万円、親会社株主帰属当期純利益を30百万円それぞれ上方修正)は、売上高が前期比21.0%増の230億円、営業利益が134.3%増の7億円、経常利益が7億円(前期は40百万円)、そして親会社株主帰属当期純利益が3億60百万円(同4億76百万円の損失)としている。

 売上高と営業利益については、ネット型リユース事業が好調に推移するほか、生産性向上施策の進捗と24年4月以降の増員効果などにより大幅増収・大幅増益予想としている。経常利益と親会社株主帰属当期純利益については、SBI証券との差金決済型自社株価先渡取引契約について2月14日に公表した一部期限前解約によるデリバティブ解約益69百万円計上が寄与する。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比比34.0%増の177億63百万円、営業利益が4.4倍の4億74百万円、経常利益が5億45百万円(前年同期は2億27百万円の損失)、親会社株主帰属四半期純利益が2億77百万円(同6億51百万円の損失)だった。

 大幅増収増益だった。ネット型リユース事業とモバイル事業の拡大が牽引し、販管費増加などを吸収した。営業利益の前年同期比3億67百万円増益の分析は、前期の拠点開設・移転関連一時費用の解消で1億07百万円増加、当期の本社移転関連一時費用の発生で68百万円減少、売上増で16億38百万円増加、粗利益率低下で2億87百万円減少、売上増に伴う販管費の増加で15億65百万円減少、生産性向上による販管費比率の低下で5億43百万円増加だった。また営業外ではSBI証券との差金決済型自社株価先渡取引契約に基づくデリバティブ評価損益が3億47百万円改善(前期は評価損2億79百万円、当期は評価益68百万円)したほか、一部期限前解約によるデリバティブ解約益69百万円を計上した。

 ネット型リユース事業は売上高が13.2%増の89億64百万円、営業利益(全社費用等調整前)が79.9%増の6億43百万円だった。個人向けリユース分野では生産性向上のためのDX施策により利益体質の強化を推進した。農機具分野は海上運賃高騰の影響で海外からの需要に買い控えが生じたため、国内法人との取引拡大を推進した。おいくら分野は地方自治体との連携推進、自社オウンドメディアを活用した加盟店獲得などの施策により順調だった。

 メディア事業は売上高が16.7%減の4億21百万円、営業利益が19.6%減の2億09百万円だった。Google社が実施した検索エンジンにおけるコアアルゴリズム変更の影響が継続した。モバイル通信事業は売上高が73.2%増の84億56百万円、営業利益が54.6%増の4億82百万円だった。契約回線数の積み上げによるストック型収入、新規回線獲得によるショット型収入とも順調だった。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が54億92百万円で営業利益が69百万円、第2四半期は売上高が59億83百万円で営業利益が1億80百万円、第3四半期は売上高が62億88百万円で営業利益が2億25百万円だった。

 25年6月期は大幅増益予想としている。ネット型リユース事業の好調が牽引する見込みだ。修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が77%、営業利益が68%、経常利益が78%、親会社株主帰属当期純利益が77%である。またSBI証券との差金決済型自社株価先渡取引契約の期限前解約に係わるデリバティブ解約益96百万円を営業外収益に計上(7月3日付リリース)する。積極的な事業展開で26年6月期も収益拡大基調だろう。

■株主優待制度を拡充

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は、24年6月末対象から新設し、毎年6月末時点で100株以上保有株主を対象として500円分のクオ・カードを贈呈するとしていたが、24年12月19日付で株主優待制度の拡充を発表した。拡充後は毎年6月末日と12月末時点で、それぞれ500株以上保有株主に対して2万5000円分のデジタルギフトを贈呈することとした。25年6月末より適用する。また25年6月には25年6月30日を基準日とする株主優待品の内容について、利用範囲の拡大を発表した。

■株価は調整一巡

 株価は戻り高値圏から反落してやや軟調な形となったが、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。7月4日の終値は1436円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS67円31銭で算出)は約21倍、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS164円84銭で算出)は約8.7倍、そして時価総額は約77億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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