【商用核融合炉へ挑戦】世界初の商用利用可能な核融合炉実現を目指す、2030年代に「実用発電」達成へ

【ヘリカル方式で世界初の「通年稼働」「正味発電」を目指す】

■新技術と資金調達で商用化に前進

 Helical Fusionは7月11日、世界初の商用核融合炉の実現に向けた基幹計画「Helix Program」を発表した。同社は「通年稼働」と「正味発電」を可能にするヘリカル型核融合炉の開発を進めており、今回新たに約23億円を調達。シリーズAラウンドにおける出資者にはSBIホールディングス<8473>(東証プライム)傘下のSBIインベストメント、KDDI<9433>(東証プライム)、慶應イノベーション・イニシアティブ、ニッセイ・キャピタル、豊田合成<7282>(東証プライム)、大和ハウス工業<1925>(東証プライム)傘下の大和ハウスベンチャーズなど多彩な大手企業が名を連ねた。これにより累計調達額は約52億円に達し、同プログラムの加速が期待される。

■唯一の三要件達成方式として注目

 Helical Fusionが採用する「ヘリカル方式」は、安定したプラズマ保持に優れるDNA構造のような二重らせんコイルを用いるもので、既存の方式が抱える限界を克服するものとされる。商用化には「定常運転」「正味発電」「保守性」という三要件の同時達成が必要とされており、これを現行技術で可能にする方式は、世界でも同社のヘリカル型のみとされている。国立研究機関「核融合科学研究所」などの長年の研究成果を引き継いだ技術により、同社は2030年代の実用発電を視野に入れる。

■国家戦略との連携とグローバル市場の展望

 政府は2025年6月に「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を改定し、トカマク型やヘリカル型など多様な方式による挑戦と、グローバルなサプライチェーン構築への参画を掲げた。国際エネルギー機関(IEA)は、2050年までに核融合関連市場が年間5500億ドル規模に成長すると予測しており、日本が主導する次世代産業創出への期待が高まっている。Helical Fusionは文部科学省から20億円の補助金支援も受けており、官民連携の象徴的な存在となっている。

■投資家の期待と全国に広がる産業連携

 今回のラウンドには、SBIやKDDIをはじめとした民間ファンドのほか、岡野バルブ製造<6492>(東証スタンダード)、能代電設工業、アオキスーパー、山田商会ホールディングなど、事業連携も見据えた多業種の企業が参画。プラント構築、エネルギー供給、生活応用といった多角的な協力体制が整いつつある。また、元サッカー日本代表の本田圭佑氏も出資に参加し、「人類の未来を左右する挑戦」と同社を支持するコメントを発表している。

■「Helix Program」が描く未来図

 Helical Fusionは、まず統合実証装置「Helix HARUKA」の開発に着手し、続いて商用機となる「Helix KANATA」によって、1年間の連続運転と80%以上の稼働率を目指す。代表の田口氏は「日本にもう一つ太陽をつくる」というビジョンを掲げ、次世代エネルギーによる社会変革を牽引する決意を示している。日本が核融合技術で再び世界をリードし、持続可能なエネルギー供給を可能にする歴史的転換点となるか、注目が集まる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■昔ながらの味わいを現代風にアレンジ、全国スーパーなどで展開  第一屋製パン<2215>(東証スタ…
  2.  日清食品ホールディングス<2897>(東証プライム)傘下の日清食品は8月18日、「カップヌードル…
  3. ■世界が注目する学問を豊富な事例とイラストで紹介  学研ホールディングス<9470>(東証プライム…
2025年10月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

ピックアップ記事

  1. ■東京市場、リスクオンとリスクオフが交錯、安全資産関連株に注目  週明けの東京市場は、米国株反発に…
  2. ■公明党離脱ショック一服、臨時国会控え市場は模索  またまた「TACO(トランプはいつも尻込みして…
  3. ■自民党人事でハト派ムード先行、逆張りで妙味狙う投資戦略も  今週の当コラムは、ハト派総裁とタカ派…
  4. ■総裁選関連株が再び脚光、政権交代期待が市場を刺激  今週の最注目銘柄は、さいか屋<8254>(東…
  5. ■金先物関連株、最高値更新で安全資産需要が強まる  日本取引所グループ<8697>は9月24日、今…
  6. ■石破首相辞任表明後も市場は急落回避、投資家の買い意欲継続  「一寸先」は、不確実で予測が難しい。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る