アステナホールディングス、ファインケミカルやヘルスケア事業が好調、通期予想は3回目の上方修正も

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。25年11月期は7月11日付で上方修正(売上高は1回目、各利益は2回目)して増収増益予想としている。ファインケミカル事業、HBC・食品事業、医薬事業が好調に推移する見込みだ。第2四半期累計(中間期)の進捗率が高水準であることを勘案すれば、通期利益予想は3回目の上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。高配当利回りや低PBRなども評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分(24年11月期より医薬事業の岩城製薬佐倉工場をファインケミカル事業へ変更)は、ファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(食品原料・機能性食品原料の製造販売、化粧品原料の販売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品・表面処理設備の製造販売など)、その他(地方創生関連のソーシャルインパクト事業など)としている。

 24年11月期の売上高(外部顧客への売上高)構成比はファインケミカル事業が36%、HBC・食品事業が26%、医薬事業が20%、化学品事業が18%、その他が0%、営業利益(全社費用等調整前営業利益)構成比はファインケミカル事業が8%、HBC・食品事業が26%、医薬事業が46%、化学品事業が25%、その他が▲5%だった。

■ファインケミカル事業

 ファインケミカル事業は、医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマを核として、スペラファーマの子会社スペラネクサス、スペラファーマの子会社でペプチド合成技術のJitsubo、および岩城製薬佐倉工場が、CMC/CDMO事業と調達プラットフォーム事業を2本柱に、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築している。またスペラファーマは創薬ベンチャーのジェイファーマに出資している。なおスペラファーマが25年6月1日付で岩城製薬佐倉工場を吸収合併予定としていたが、5月12日付で合併延期を発表した。

 23年6月にはJitsuboが、世界有数のヘルスケア企業であるNovo Nordiskの糖尿病・肥満・非アルコール性脂肪肝炎・慢性腎臓病・アテローム動脈硬化性心血管疾患・心不全の分野(ジェネリック医薬品除く)のペプチド合成において、Jitsuboのペプチド合成特許技術であるMolecular Hiving法の独占的使用および製造ライセンス契約を締結した。本契約によってJitsuboは、Novo Nordiskから開発フィー、年間独占権料、および製品の臨床段階、商品化段階の進捗に合わせたマイルストーンフィーを受領する。

 24年3月には、湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)に拠点を置く創薬支援企業5社(スペラファーマ、AXcelead Drug Discovery Partners、十全化学、東レリサーチセンター、メディフォード)による「湘南創薬コンソーシアム」を発足した。

■HBC・食品事業

 HBC・食品事業はイワキ、化粧品通販のアプロス、健康食品・化粧品販売のマルマンH&B、海外製化粧品輸入販売のアインズラボを中心に展開している。25年7月には、イワキが池田物産グループ(池田産業、池田物産およびその他関係会社)を子会社化(株式譲渡実行日25年9月1日予定)すると発表した。化粧品・食品原料分野を強化する。なお一般医薬品卸売事業については戦略的に順次撤退・縮小している。

■医薬事業

 医薬事業は皮膚科領域に特化したニッチトップ・ジェネリックメーカーの岩城製薬が展開している。20年1月に医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業へ出資、21年1月に岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月にヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。

 22年7月にはスキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。

 22年8月にはキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。23年4月にはキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始した。23年7月には帝人ファーマから「ボンアルファ・ボンアルファハイ」の日本における製造販売承認を承継した。

■化学品事業

 化学品事業(表面処理薬品・表面処理設備の製造販売など)はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。ハイエンド表面処理薬品に特化し、半導体/電子部品領域で高い市場シェアを誇っている。

■SDGsとソーシャルインパクト事業

 持株会社体制への移行とともに本社機能の一部を石川県珠洲市に移転し、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業するなど、ソーシャルインパクト事業としてSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする新規事業を推進している。21年7月には奥能登地域のSDGS達成支援を目的とする奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)に出資、21年12月にはイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更して事業内容を地方創生関連事業に変更した。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザインの「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。さらに、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」へ出資した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

■中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」では、定量的ターゲットに30年11月期の売上高1300億円以上(収益認識基準適用前ベース)およびROE13%以上を掲げている。セグメント別の目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 25年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)では、27年11月期の目標値として売上高700億円、営業利益35億円、ROE8.8%を掲げている。また政策保有株式を縮減する方針を打ち出し、27年11月期までに政策保有株式の連結純資産比率を10%未満まで減少させる計画としている。

 基本戦略には3つのサステナビリティ戦略として、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC部門でサービス機能強化による高利益率受託案件獲得、CDMO部門で高薬理活性注射剤案件や固形剤案件の獲得による事業拡大、医薬品原料部門で高薬理活性注射剤案件の獲得による高付加価値化を推進する。

 HBC・食品事業は、BtoB部門で顧客の多様なニーズに応えるプラットフォーム機能強化と市場浸透、BtoC部門で企画開発機能強化による自社企画化粧品ブランド「ピュレア」スキンケアシリーズの拡販、生活の質向上に寄与する健康食品新製品の開発、韓国コスメ新ブランドの創出、メイクなど新カテゴリー領域の開発、広告宣伝活動の強化などを推進する。

 医薬事業は、医療用医薬品部門で既存品拡販と薬価改定対策としてルリコナゾールクリーム・軟膏1%「イワキ」の同種同効品からの切り替えによるシェア拡大や適性使用の啓発活動によるステロイド外用薬の使用量増加、美容医療部門で新商品開発やナビジョンブランドの認知度向上による販売拡大を推進する。

 化学品事業は、薬品・装置部門で高密度半導体パッケージ用途に特化した製品およびプロセスの開発、薬品部門の半導体向けで12インチウェハ対応薬品および設備開発による成長市場での体制構築、薬品部門の電子部品向けで日本や韓国における実績をベースとした台湾・中国・南アジアでの拡販を推進する。

 ソーシャルインパクト事業は、ヘルスケア部門で自社ブランド「NAIA」の認知度拡大やDtoC顧客台帳の充実化、素材研究・加工技術の安定化や生産量の増加による商品数拡大、農業部門で米穀・ラフマ栽培面積による生産量の増加を推進する。

■25年11月期通期利益は3回目の上方修正の可能性

 25年11月期の連結業績予想(25年7月11日付で売上高を上方修正、各利益を2回目の上方修正)については、売上高が前期比10.4%増の640億円、営業利益が10.1%増の31億円、経常利益が3.4%増の29億円、そして親会社株主帰属当期純利益が18億円(前期は減損損失計上で25億25百万円の損失)としている。配当予想は据え置いて前期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。予想配当性向は40.3%となる。

 前回予想(25年5月28日付で売上高を据え置き、各利益を上方修正して売上高630億円、営業利益26億円、経常利益25億円、親会社株主帰属当期純利益15億円)に対して、売上高を10億円、営業利益を5億円、経常利益を4億円、親会社株主帰属当期純利益を3億円それぞれ上方修正した。営業利益と経常利益は従来の減益予想から一転して増益予想となった。

 第2四半期累計(中間期)は、売上高が前年同期比7.2%増の301億02百万円、営業利益が65.2%増の22億22百万円、経常利益が56.3%増の21億49百万円、親会社株主帰属中間純利益が82.8%増の12億88百万円だった。

 前回予想(25年5月28日付で売上高を据え置き、各利益を上方修正して売上高300億円、営業利益16億円、経常利益16億円、親会社株主帰属中間純利益9億円)を上回る増収・大幅増益で着地した。化学品事業が需要回復遅れで低調だが、ファインケミカル事業、HBC・食品事業、医薬事業が好調だった。一部の販管費が下期に後ろ倒しとなったことも寄与した。

 ファインケミカル事業は売上高(外部顧客への売上高)が11.6%増の115億58百万円、営業利益(全社費用等調整前)が8億71百万円(前年同期は0百万円の損失)だった。医薬品原料プラットフォーム部門では事業拡大に伴う増員やオフィス移転で費用が増加したが、医薬品開発エコシステム部門においてMicroED関連の新規案件や中分子原薬プロセス開発案件など受注が好調に推移した。医薬品CDMO(医薬品開発製造受託)部門においては、高品質な原薬の需要が増加したほか、外用剤製造の2シフト制導入により工場稼働率が上昇したことも寄与した。

 HBC・食品事業は売上高が19.6%増の80億17百万円、営業利益が2.7倍の5億44百万円だった。食品原料部門、化粧品原料部門、ライフサイエンス部門は需要が伸び悩んだが、化粧品製品部門が自社企画製品「Pureal」の販売好調に加え、韓国コスメの輸入化粧品「Torriden」シリーズの新製品投入効果も寄与して伸長した。

 医薬事業は売上高が11.0%増の60億09百万円、営業利益が10.2%増の6億79百万円だった。医薬品部門では選定療養品目となった後発医薬品が好調に推移し、美容医療部門では医療機関専売化粧品「NAVISION DR」シリーズが伸長した。

 化学品事業は売上高が19.6%減の44億99百万円、営業利益が65.4%減の1億90百万円だった。表面処理薬品部門、表面処理設備部門とも需要回復遅れが影響した。

 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業、投資事業等の新規事業)は、売上高が5.9%減の17百万円、営業利益が2億02百万円の損失(前年同期は51百万円の損失)だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が143億34百万円で営業利益が10億32百万円、第2四半期は売上高が157億68百万円で営業利益が11億90百万円だった。

 修正後の通期予想に対する第2四半期累計(中間期)の進捗率は売上高が47%、営業利益が72%、経常利益が74%、親会社株主帰属当期純利益が72%である。第2四半期累計の進捗率が高水準であることを勘案すれば、通期利益予想は3回目の上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年11月末に500株以上を継続1年以上保有株主が対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は、毎年11月末時点で500株(5単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に、保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈する。23年11月末対象より実施した。

■株価は上値試す

 株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。高配当利回りや低PBRなども評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。7月25日の終値は487円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円63銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS624円60銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約200億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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