アイデミー、大規模案件獲得と効率運営で25年5月期は営業黒字を達成、先行投資でさらなる飛躍へ
- 2025/7/7 08:05
- アナリスト銘柄分析

アイデミー<5577>(東証グロース)は東大発のAIスタートアップである。AI/DX人材の育成を支援するプロダクト、顧客のAI開発やDX変革を伴走型で支援するソリューションなどを一気通貫サービスとして提供している。25年5月期は上方修正(6月12日付)し、営業利益と経常利益については従来の赤字予想から一転して黒字予想とした。なお同社は27年5月期以降の持続的な成長軌道を実現するため、25年5月期から26年5月期にかけて、広告宣伝・営業活動およびAI開発事業への先行投資を予定しており、26年5月期は営業損失を計上する見込みとしている。中長期的に同社を取り巻く事業環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は底放れから基調転換を確認した形であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお7月11日に25年5月期決算発表を予定している。
■東大発のAIスタートアップ
同社はAI開発支援を中心に人材育成からコンサルティングまで提供する東大発のAIスタートアップである。AIをはじめとする新たなソフトウェア技術を、いち早くビジネスの現場にインストールすることで、次世代の産業創出を加速させることを目指している。なお25年1月に持続可能な脱炭素社会の実現を目指す日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)に加盟、一般社団法人AIガバナンス協会に加盟した。
M&A関連では24年1月にWebクリエイティブ事業やWebアプリケーション構築事業を展開するファクトリアルを子会社化、24年6月にWEBサイト構築・運用等を展開するまぼろしを子会社化、24年12月にWebアプリケーション開発に強みを持つIT企業のトゥーアール社を子会社化した。資本業務提携としては20年1月にダイキン工業<6367>、テクノプロ・ホールディングス<6028>の子会社テクノプロ、21年6月に古河電気工業<5801>、22年12月に日本ゼオン<4205>と、それぞれ資本業務提携している。
■AI/DX内製化支援のプロダクトやソリューションを一気通貫で提供
同社は、単にAIが絡むシステムの受託開発や研修を請け負うのではなく、AI/DX内製化をユーザー主導で実現するために必要なツールを提供するという基本方針のもと、企業変革の基盤となるDXの推進およびAI/DXの内製化を支援する各種プロダクトやソリューションを、相互シナジーが期待できる一気通貫サービスとして提供している。
サービス区分は、企業がデジタル変革に向けて必要とするAI/DX人材の育成を支援するAI/DXプロダクト、顧客のAI開発やDX変革を伴走型で支援するAI/DXソリューション、個人向けにAI/DXラーニングサービスを提供するAI/DXリスキリングとしている。
AI/DXプロダクトは、オンラインAI/DXラーニングAidemy Business、講師派遣型でAI/DX人材育成研修を行うAidemy Practiceなどを主力としている。収益モデルはライセンス数・人数に応じて売上計上するリカーリング型である。
AI/DXソリューションは、AI/DX開発の内製化に向けた伴走型支援サービスとしてAidemy Solutions(25年6月に旧Modeloyをリニューアル)を提供している。経験豊富な同社のエンジニア・データサイエンティストが顧客企業のメンバーとともに、課題選定から開発・運用までのプロジェクトを推進し、AI開発やDX推進を支援する。24年1月にはファクトリアルを子会社化してデリバリー能力を増強した。また素材業界に特化した新ラインのAidemy Solutions for Materialや、企業が自社の組織課題に応じてAI導入やDXを進められるAidemy Consultingなども展開する。収益モデルはプロジェクトごとのフロー型である。
AI/DXリスキリングは個人向けのオンラインDXラーニングサービスAidemy Premiumを提供している。
■先端技術に関する知見が強み
同社はAIをはじめとする先端技術に関する知見を強みとしている。AIに関する知見を有する経験豊富なデータサイエンティストが多数在籍し、相互シナジーが期待できる一気通貫サービスを提供していることに加え、M&Aやアライアンスも活用しながら、生成AIやMaterials Informatics(化学分野でのAI活用)などの最新AI技術を横展開することで、従来型のAI/DXベンダーとの競合差別化を図っている。
■先端技術のサービスラインナップ拡充とクロスセル拡大を推進
成長戦略として、生成AI関連などの先端技術テーマを軸にしたプロダクトの新規開発、業界別ソリューションの充実や横展開、サービスラインナップの拡充、クロスセルによる売上拡大などを推進している。単にプロダクトを提供するだけでなく、教育研修分野の顧客(受講生)と共創してAI開発を行うなど、AI/DXプロダクトの顧客にAI/DXソリューションをクロスセルすることにより、業種業界をまたいだ売上拡大を図ることが可能になる。
23年7月にはデータ活用プラットフォームLab Bankを提供開始、24年3月にはDPAS(Digital Professional Assessment Service)を提供開始、24年4月には法人向けAidemy Businessおよび個人向けAidemy Premiumの新機能としてパーソナルAIアシスタントMy Aideを発表、24年5月にはNVIDIAのAIスタートアップ支援プログラムNVIDIA Inception Programのパートナー企業に認定された。
■M&A・アライアンスも活用
新プロダクト開発や売上拡大に向けて、M&A・アライアンスも積極活用する方針としている。M&Aのターゲットとしては、AI/DXソリューションのModeloyのデリバリーパートナーになり得る開発会社(WEB制作会社など)や、エンタープライズ向けプロダクトを保有する会社を想定している。
生成AIに特化したソリューションを提供する東大松尾研究スタートアップであるneoAIと協業し、生成AI領域における学習コンテンツ開発やセミナー開催などで連携しているほか、24年2月にはプラスアルファ・コンサルティングが提供するタレントマネジメントシステムとの連携を開始した。24年3月には、デロイト トーマツ グループのデロイト トーマツ コンサルティング合同会社とアライアンス締結に合意した。
24年5月には、学研ホールディングス<9470>のグループ会社でオープン研修Tomorrowなどを展開するTOASUと、AI/DX人材養成の体制拡充に向けて提携した。24年6月には企業向け研修サービスを提供するサーカスと協業開始した。24年7月にはMakeDなどとともに、カーボンニュートラル実現に向けて必要となる人材の課題に対応するグリーン人材開発協議会を設立した。
■日本を代表する大企業との取引が中心で強固な顧客基盤
24年5月期のサービス別売上高は、法人向けのAI/DXプロダクト事業が12億83百万円、AI/DXソリューション事業が5億43百万円、個人向けのAI/DXリスキリング事業が2億92百万円だった。24年5月期末時点の長期継続顧客数(12ヶ月以上の契約顧客数)は前期末比26社増加の144社で、長期継続顧客比率は85%となった。AI/DXプロダクト事業は法人との取引機会創出により高成長を継続した。AI/DXソリューション事業はデジタル変革伴走型支援ニーズの高まりによって案件単価が向上し、収益性も向上した。個人向けのAI/DXリスキリング事業は需要が堅調に推移した。なお24年5月には「Aidemy」の累計ユーザー数が30万人を突破した。
資本業務提携しているダイキン工業、テクノプロ、古河電気工業、日本ゼオンのほか、本田技研工業、キヤノン、大日本印刷、冨士フィルム、大塚ホールディングス、大和証券グループ本社、住友商事など、AI/DXの内製化に取り組む日本を代表する大企業との取引が中心となっており、強固な顧客基盤を構築している。
25年2月にはサッポロホールディングス<2501>と連携し、サッポログループ全社員約6000名を対象に生成AI研修の提供を開始した。25年4月にはノーリツ<5943>と進めているDX人材育成について、育成対象を従来の生産本部に加えて営業本部へ拡大した。25年5月には三菱電機<6503>が設立した従業員向けDX人財育成機関「DXイノベーションアカデミー」の初級講座の学習コンテンツとして、Aidemy Businessの提供を開始した。25年7月にはAidemy Businessの新規導入として北海道ガス、北銀ソフトウェア、三協立山をリリースした。
資本業務提携先のダイキン工業とはAidemy Business導入後、アカウント増加やModeloyへのクロスセルに進み、今後も共同プロジェクトの実施を計画している。日本ゼオンとはデジタル人材育成を起点として、材料開発に関するMaterials Informatics領域での協業に進み、今後は共同開発したプロダクトの素材メーカーへの外販なども計画している。古河電気工業とはAidemy Businessの全社展開やModeloyによる工場内システム内製化支援のほか、MI領域での基礎モデルを共同開発中である。
■25年5月期は営業・経常黒字予想
25年5月期の連結業績予想(25年6月12日付で上方修正)については、売上高が前期比3.3%減の20億50百万円、営業利益が40百万円(前期は2億94百万円)、経常利益が40百万円(同2億90百万円)、親会社株主帰属当期純利益が10百万円の損失(同2億15百万円)としている。
前回予想(2月14日付で下方修正、売上高19億30百万円、営業利益1億10百万円の損失、経常利益1億10百万円の損失、親会社株主帰属当期純利益1億50百万円の損失)に対して、売上高を1億20百万円、営業利益を1億50百万円、経常利益を1億50百万円、親会社株主帰属当期純利益を1億40百万円、それぞれ上方修正して、営業利益と経常利益については従来の赤字予想から一転して黒字予想とした。規模の大きいAI/DX関連の人材育成投資案件獲得などで売上高が前回予想を上回ったほか、費用の効率的運用なども寄与した。
なお同社は27年5月期以降の持続的な成長軌道を実現するため、25年5月期から26年5月期にかけて、広告宣伝・営業活動およびAI開発事業への先行投資を予定しており、26年5月期は営業損失を計上する見込みとしている。中長期的に同社を取り巻く事業環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株価は上値試す
株価は底放れから基調転換を確認した形であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。7月4日の終値は855円、前々期実績連結PBR(前々期実績連結BPS294円21銭で算出)は約2.9倍、そして時価総額は約34億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)