【小倉正男の経済羅針盤】四面楚歌、日本経済はデフレ不安

■世界経済は3.2%成長に引き下げ

 IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しが、発表のたびに引き下げられている。現状では、2016年の成長率は3.2%となっている。

 中国経済の減速、ブラジル経済の悪化、原油価格の低迷とデフレ要因に事欠かない。アメリカもドル高が不安要因、欧州も混迷が尾を引いている。日本の成長率など0.5%とみられている。ちなみに、2017年の日本の成長率はマイナスに転じると予想されている。

 中国経済の減速をどうみるかだが、これを厳しく想定すると、世界経済の3.2%という成長率も「甘い」ということになる。世界経済について、よい材料が何もない。悪い材料しかない。悪い材料の中身がさらに悪くなりかねない。これが現状である――。

 IMFは、これまで日本には消費税の再引き上げを求めてきている。しかし、2017年については、消費税引き上げの特殊要因でマイナス成長になるという見通しを明らかにしている。

 世界経済に暗雲が立ち込めているいま、消費税を引き上げたら日本は再びデフレに突入するという警告と受け取ることもできる・・・。IMFも暗に日本の消費税引き上げを「困難」とみているのではないか。

■中国バブル崩壊はどこまで足を引っ張るのか

 中国経済については、何度か触れてきているが、巨大なバブル崩壊プロセスに入っている。世界経済を引っ張るどころか、どこまで世界経済の足を引っ張るか、その程度が問われている。

 世界経済の足を引っ張り、泥沼の淵に立たせる可能性も想定する必要があるとみておかなければならない。中国のバブル崩壊はスケールが巨大、と身構えるべきである。

 アメリカも「世界の警察官」ではない、と宣言するまで財政面で追い込まれている。他国がおカネを払ってくれるなら、「傭兵」をやるという立場にみえるドナルド・トランプ氏のような大統領候補が人気を集めるなど、世界経済を引っ張る状況にはない。

 世界的に保護主義や国家主義、民族主義を台頭させかねない状況ということになる。これでは「第三次世界大戦」前夜ということになり、救いが見当たらない。

■日本経済はデフレ不安

 どこの国も足を引っ張ることはあっても、リーダーとして世界全体を引っ張り上げることは躊躇している。

 リスクは取れない、あるいは取らないでは、世界経済はよくなるわけもない。それぞれが自国を守ろうとするから、保護主義的になる。

 これでは、消費税引き上げという特殊要因を内包する日本のみならず、世界がマイナス成長に陥ることも心配する必要がある。世界経済がきしめば、社会的な混乱や不満・抗争が生じることになる。

 景気見通しを論じるとクラい話になりかねないと危惧していたのだが、やはりそういうことになってしまった。

 あまりに救いのないことはいいたくない。だが、どこをみてもよいことはない。

 四面楚歌――、世界経済はデフレ懸念に蔽われている。消費税引き上げが、仮になくても日本経済はデフレ不安に包まれることになる。

(経済ジャーナリスト『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社編集局・金融証券部長、企業情報部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事など歴任して現職)

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